71AシングルアンプのA2級化・その3
改造した71Aシングルアンプの諸特性を測定してみた。なお、改造前の諸特性に関してはコチラをご参照。
まずはじめに諸特性。NFBが6dBとなる抵抗値は1.4KΩとなった。手持ちの抵抗の都合で1.2KΩに決め打ち。NFBは6.6dBかけてみた。
無帰還での周波数特性。左右チャンネルで低域のレベルに差があるのは71Aのrpに違いがあるものと思われる。
NFBをかけたら低域も高域もレベルが上昇。高域の減衰が素直なので位相補償コンデンサは入れなかった。もし気になる人は位相特性を測って、位相が180度遅れる周波数を調べ、ゲインが1倍より大きかったら位相補償コンデンサを入れるようにしてね。
クロストーク特性。低域でも残留ノイズに埋もれていて悪化は見られない。20Hz~20KHzで-63dB以下となった。測定電圧が1KHz・1Vなので低めだが問題ないと思う。
Lchの歪率特性。バナナみたいなカーブになった。出力は100Hzがリミットして5%歪みで0.7Wだが、1KHz・10KHzでは0.9W出ている。71AのIpを増やせばもっと出るが、止めておく。
Rchの歪率特性。こっちは三日月みたいなカーブとでもいうべきか。こちらのほうが歪率は良い。5%歪みで0.8W。
出力が0.6Wを超えてからの歪率カーブの折れ曲がりがないのはA2級ドライブのおかげ。このほうが急に歪んでいる感じが出ないはず。
改造後の回路図を上記に示す。
試聴してみるとやはりエミッタフォロアの効果か、スケール感が大きくなったように感じられる。低域のレベルが上がるわけではないので不思議だ。ただ改造に見合う効果があるのかというと、改造前でも印象が良かったのでどうかな、といったところ。
改造してからRadioTunesを流しているが、低音が入っている曲はしっかりと低音が出るので不満を感じない。音楽じゃなくて音ならどうかと思うが、プッシュプルアンプである必要が無いというほど充実している。
この記事へのコメント
直結とかA2動作で検索していったらこちらにたどり着きました。
FETとトランジスタを組みあわせてカスコード動作、さらにエミッタフォロワでの直結動作。素晴らしい回路だと思います。
質問ですが、この組み合わせでバイアス-40V程の71Aをドライブできるということは、
貴方が作られたVT-62アンプのドライブ(約±50V位)も可能でしょうか?
私もVT-62アンプを検討しているのですが、電圧増幅部をどうしようか考えているところです。
お忙しいところ申し訳ありませんが、ご教授いただけたら幸いです。
ご質問の件ですが、拙VT-62シングルアンプ・回路設計の10KΩロードラインを想定すると
http://65124258.at.webry.info/201512/article_11.html
Eg=-14Vで+35V~-14V~-70Vなので+49V~-56Vで振れれば良いことになります。
カスコードを2SK30ATMにして(2SK117では利得が過剰)フォロア段のエミッタDC電圧を72Vとすると、LTspiceでは+54V~-66Vで振ることが可能と出ましたので一応OKです。ただ+B電圧はVT-62のグリッド直結の場合420Vくらい必要です。
2SK30も2SC4793も何本か持っていますので,
試させていただこうと思います。
ただ2SK30はgmが低いので、負荷抵抗は47KΩではなくて、100KΩ位が必要ではないでしょうか。
NFB量と仕上がりの利得をどのくらいにするかで違ってきますが、拙VT-62シングルアンプのように6dBのNFBで利得を10倍程度にするのなら100KΩにするのが良いと思います。その際2SK30Aのソースに入れる半固定抵抗は2KΩに変更して下さい。
わかりました。
ところでVT-62アンプでは、2SK30のIdssはどれほどのものをお使いですか?
私の持っているモノはどれも1.7mA程度なのですが、実際には3mA程度は必要に思えます。
その場合は、FETを並列接続して使ってもかまわないのでしょうか?
何度も私のしょうもない質問に誠実にお答えいただき、感謝いたします。
半導体ドライブの真空管アンプの作製ははじめてになります。動作点や電源など、検討事項も多いので完成はまだまだ先のことになると思いますが、大変参考になりました。本当にありがとうございます。